くらしの中の計量のコーナーFestival of The Measurement Day

日本最初のガラス製寒暖計の製作 ビールびんも計量器って本当?

容量線入りグラスの紹介 適正計量管理事業所制度の紹介 船積み荷物の計量


わたしたちの身の回りでは、普段はあまり気にしないけれど、様ざまな計量が行われています。

その中からいくつか、そんな身近な計量をご紹介しましょう。


日本最初のガラス製寒暖計の製作


 今年の夏も暑かったですが、そんな気温をはかるのが寒暖計です。

 今年は中止になりましたが、毎年11月1日に実施している「都民計量のひろば」では 計量体験コーナーでガラス製寒暖計の工作を行っていて、参加者から好評を得ています。

 そんな寒暖計が、日本で初めて作られたのはいつでしょうか?
 それが、これからご説明する平賀源内が製作したタルモメイトルだと言われています。

●日本最初のガラス製寒暖計の製作

平賀源内のタルモメイトル

 平賀源内は、オランダ渡来のタルモメイトル(蘭語 thermometer)を見てから3年後の1768年(明和5年)に それを模した器物を製作し、「日本創生寒熱昇降記」を著しました。

 日本ガラス計量器工業協同組合では、この源内のタルモメイトルを 2003年(当時は、東日本計量器協同組合)に復刻しています。
 この復刻版の制作にあたっては、源内の「寒熱昇降図」を準拠し、 オランダのブールハーフェ博物館のホームページを参考に18世紀中期オランダ製の液体封入ガラス製温度計の仕様を探り試作しました。
 この寒暖計は、東京都計量検定所の計量展示室にも展示しています。

平賀源内が国内で最初に製作した寒暖計の復刻版
(寒熱昇降記・タルモメイトル)

平 賀 源 内

1728年~1779年12月18日
江戸中期の本草家・戯作者。
名は国倫、字は士イ(変換不可)、号は鳩渓、風来山人・天竺浪人・福内鬼外。
讃岐国高松藩の志度浦蔵番の子。
1756年(宝暦6)江戸に出て田村藍水に入門し本草学を学ぶ。翌年から藍水らと江戸湯島に日本初の薬品会(物産会)を開催。
数次にわたる出品物について解説した「物類品シツ(変換不可)」を刊行した。
蘭書によって火浣布・寒暖計・エレキテル(摩擦起電機)を制作。

ガラス製温度計、湿度計、浮ひょう(比重計・密度計)については、
こちらの日本硝子計量器工業協同組合のホームページもご確認ください。


ビールびんも計量器って本当?


● 特殊容器制度

 ガラス製のビールびん、日本酒の一升びん、牛乳びんは皆さんもよく利用されると思います。
 ビンの底の近くに、図のビール瓶に表示されているのと同じマークを見つけることができます。
 マークのとなりには、「633ml」のように内容量の体積表示もされています。
 この表示が付された透明又は半透明のガラス製容器は、「特殊容器」と呼ばれます。

 「特殊容器」は計量法(第17条)で定められている容器で、正確には計量器ではありません。
 付されている「特殊容器の表示」の形状から「丸正(まるしょう)びん」と通称で呼ばれています。
 液体商品毎に定められた一定の高さ以上に液体を満たすと一定の内容量が確保できます。

 「特殊容器」は、下記の商品にその使用が認められています。

特殊容器の使⽤が認められている商品(計量法施⾏令第8条)

1 ⽜乳(脱脂乳を除く。)、加⼯乳及び乳飲料 2乳酸菌飲料 3 ウスターソース類 4 しょうゆ 5 ⾷酢 6 飲料⽔ 7 発泡性の清涼飲料 8 果実飲料 9 ⽜乳⼜は乳製品から造られた酸性飲料 10 みりん(酒類に該当するものを除く。) 11 酒類(清酒、合成清酒、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、みりん、ビール、果実酒、⽢味果実酒、ウイスキー、ブランデー、原料⽤アルコール、発泡酒その他の醸造酒(第三のビール等)、スピリッツ、リキュール(第三のビール)、雑種、ただし粉末酒を除く) 12 液状の農薬

※ 計量法上、特殊容器に型式ごとに定められた高さ(下限入味線高さ)まで満たすことによって、計量器で体積を計量しなくてもよいとされています。

 ガラスびんが身近な容器として広く使われるようになったのは国産化が始まった明治末期からです。
 それ以前は輸入されたビールやワインの空きびんがリユースされていました。

 ガラスびんの本格普及は戦後になってからで、昭和40年頃には、飲料の多くがガラスびん入りになりました。
 大量生産される飲料品の製造効率を向上させるため、「特殊容器」の制度が検討されました。
 この制度は昭和31年の計量法改正で取り入れられ、これまで60年以上の歴史があります。

 「特殊容器」はリターナブルびんとして回収再利用のシステムが確立されています。
 ガラスびんは比較的高価なため、国税庁もリターナブル容器の回収体制確保のための指針を示しています。
 しかし、最近は、若年層の消費者にビールびんや一升びんの回収システムが浸透していません。
 そのため、ごみとして捨てられてしまうことも多く、2000年以前と比べると回収率が低くなる傾向にあります。
 最近では、手軽さや輸送コストの削減などから容器の主流がペットボトル、アルミ缶や紙パックに代わっています。

 近年、社会的にSDGs、エシカル消費、3Rなどの取り組みが進んでいます。
 そこで、日本のリターナブルびんの代表ともいえるビールびんや一升びんが見直されてきています。
 皆さんも「特殊容器」を活用した省資源の取り組みにご協力ください。

 特殊容器制度についての詳細は、こちらから。

はかるん


容量線入り(目盛付き正量)グラスの紹介


 皆さんは、飲食店でビールやワインをグラスやジョッキで注文した時に、微妙にほかの人と量が違うなと感じたことがありませんか?

 生ビールには、大ジョッキ、中ジョッキ、グラスとサイズがありますが、お店によって使っているジョッキなどが異なるので、実際にはどれくらいの量なんだろうと思ったことがあるのではないでしょうか?

 ヨーロッパに旅行したことのある方は、現地の飲食店で写真のような目盛がワインやビールのグラスに描かれているのを目にしたことがあるでしょう。

ビールグラス(0.3リットル:ポーランド)

ワイングラス(0.25リットル:ウィーン)

 ヨーロッパにおいては主にドイツ、フランス、オランダ等では、法律で決まっていてビールやワインを注文すると必ず容量線入りグラスで出てきて、ビールの場合は泡を除いた液体部分が目盛以上となるようになっています。

 例えばドイツの計量法では「面前計量販売容器(計量線入り計量グラス)」が定義されており、また、罰則規定も定義されています。
 また、「MID」(計量器に関する欧州議会及び理事会指令)においては、体積実量器として線入り容器が明示されています。
 「CEマーク」(商品がすべてのEU(欧州連合)加盟国の基準を満たすものに付けられる基準適合マーク)でもMIDのマーキングの項目で明確に規定されています。

 我が国でも「関東甲信越地区計量団体協議会」で「容量線入りグラス推進委員会」が結成され、東京計量士会でも制度化に向かって積極的に活動しています。
 「都民計量のひろば」の会場でも容量線入りグラスの展示コーナーを設けるなどして、普及啓発に努めています。

 日本では、一部ではそこまで規制しなくても良いのではないかという考えもありますが、エシカル消費の観点からも、無駄のない正量取引につながるこの容量線入りグラスについて、目を向けてみましょう。


適正計量管理事業所制度の紹介


 適正計量管理事業所制度は、自主計量管理を推進するための制度です。

 国家資格の計量士を中心に計量管理を自主的に推進し、適正な計量を実現している事業所を 申請により都道府県知事や経済産業大臣が適正計量管理事業所に指定します。

 東京都内では、百貨店、郵便局、豊洲市場内の事業者、大手スーパーの一部、製薬事業者、食品製造事業者などがこの適正計量管理事業所に指定されています。
 適正計量管理事業所は下図の標識を掲げることができます。(法127~133条)

 東京都内の適正計量管理事業所の一覧はこちらから

適正計量管理事業所の計量管理

適正計量管理事業所の実例

 東京都では、百貨店はすべて適正計量管理事業所に指定されています。

 そのうちのひとつ、株式会社松屋の計量管理をご紹介します。

 店舗は銀座店と浅草店の2店舗があり、昭和28年に適正計量管理事業所の前身の計量器使用事業場に指定されて以来、計量法に基づき自主計量管理を推進しています。

 計量管理は、環境マネージメント部が主管部署で、計量士(社員:1名)が実務の中心となり実施しています。

 計量士は、東京都に提出した計量管理規程に基づき、年に一度の計量器の定期検査、年に4度の量目検査を行い、適正な計量が行われているかを定期的に確認しています。

 日常の計量管理については、各店舗の食品フロアの各部門のマネージャー・主任が適正計量管理主任者となり、計量士の指導に基づき確認を行っています。

 計量作業者に対しては、計量士や主任者が定期的に計量に関する教育を行い、適正計量がお客様の信用を高めることにつながるという意識づけを徹底しています。

 適正計量管理事業所制度についての詳細は、こちらから。


船積み荷物の計量


 東京都の南は、江戸川から多摩川河口まで東京湾に面しています。

 この東京湾に面した大井コンテナふ頭、品川コンテナふ頭、青海コンテナふ頭、東京フェリーふ頭などの総称を東京港と呼びます。
 東京港は、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港とともに主要5港といわれています。
 大都市の産業活動や住民の生活に必要な物資の流通を担う都市型商業港湾です。

 港勢圏は、人口4,000 万人を擁する首都圏、信越、南東北など広大な地域に及んでいます。
 そのため、消費のための貨物が多いため、入荷が出荷の倍の実績となっています。

 そんな東京港に出入りする船舶でも様々な計量が行われています。

 たとえば、船積みするコンテナなどの荷物の重さや大きさが正しくわかっていないと、バランスをくずしてしまい安全運航に問題が出てしまうほか、限られた船内の空間に効率よく荷物を積み込むことができません。

 そのため、これらの船積み荷物を正確に計量することを船積検量といいます。

 輸入貨物についても、「貿易取引」、「税関に対して行う輸入申告」、貨物に欠減があった際、保険求償」のために正確な重量が必要になる場合があり、輸入貨物の重量計測(質量検定)を行っています。

 これ以外にも、計量器を使っての計量ではありませんが、バラ積貨物、たとえば鉄鉱石類、石炭、鉄くず、塩等の取引数量の決定は船舶の喫水検査(Draft Survey)によるのが国際的な商習慣になっています。この検査は、アルキメデスの原理に基づき、貨物の積載時と荷揚げ後の船舶の喫水(喫水とは、船舶が水上にある際に船体が沈む深さ、すなわち船体の一番下から水面までの垂直距離のこと)の差を写真の船舶の側舷の目盛で読み取り、排水量を算出して船舶に積載されている貨物の積載トン数を決定するものです。

 荷役設備に設けられた計量器の有無にかかわらず、大量のバラ積貨物の重量を迅速・的確かつ経済的に算出できる方法として この喫水検査が広く採用されています。

 海事の検量・検定、海事鑑定の詳細については、一般社団法人日本海事検定協会のホームページをご確認ください。

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都民計量のひろば 実行委員会事務局 東京都江東区新砂3-3-41
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